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「春の雪 豊饒の海 一」三島由紀夫

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三島由紀夫の遺作でもある長編四部作、豊饒の海を読み始めました。第一巻は映画化もされた春の雪です。予告編movieを見てみましたが、主演の竹内結子さんがとても綺麗で儚くて、聡子のイメージにぴったりでした。

また清顕の住む邸の私のイメージは、上野池之端にある「旧岩崎邸庭園」でして、撞球場が併設されている洋館の雰囲気がドンピシャ!という訳で、すごくリアリティをもって読むことが出来ました。
※但し、実際の松枝侯爵邸のモデルは、愛知県の明治村にある西郷従道の邸宅だそうです。wikiより

月のイメージと物語全体をとおしての感想

「豊饒の海」とは、Mare Foecunditatis(豊かな海)という、月の海(月の表面にある盆地)の事で、「春の雪」の中にも、月と関連するものがいくつか登場します。

奈良の門跡寺院「月修寺」・シャムの王子達の妹で恋人の月光姫。それから、明治大正時代の貴族階級の生活の優雅さにも、月の様な手が届かず神秘的な美しさを感じます。

そして、これらが、比喩と装飾が多めで華やかな三島由紀夫の文体にマッチしていて、圧倒的な世界観が作られていました。

時代とか世間という美しく大きくて圧倒的なものの中で、美しいけれど愚かさやどうしようもなさも併せ持つ人間が、あがなえない力に巻き込まれて翻弄されていく様が描かれていて、こういった人生の成り立ちは、時代が変わっても根本的には今も同じです。 自分とは全く別世界の物語だけれど、通じるものもあり、自分も、得体のしれない奇妙で神秘的な何かの影響から逃れられずに生きているような気がしました。

時間と空間とわれと、手に触れられないもの

シャムの王子が初めて清顕に会った時に、故国のお寺の写真を見せながら言った言葉

すべて神聖なものは夢や思ひ出と同じ要素から成立ち、時間や空間によってわれわれと隔てられてゐるものが、現前してゐることの奇蹟だからです。 しかもそれら三つは、いずれも手で触れることのできない點でも共通してゐます。 手で触れることのできたものから、一歩遠ざかると、もうそれは神聖なものになり、奇蹟になり、ありえないやうな美しいものになる。 事物にはすべて神聖さが具わってゐるのに、われわれの指が触れるから、それは汚濁になってしまふ。 われわれ人間はふしぎな存在ですね。指で触れるかぎりのものを潰し、しかも自分のなかには、神聖なものになりうる要素を持ってゐるんですから

手が届かないものだから、手に入れられたら奇蹟だと感じ、美しく見え、手に入れたくなる。そういったものは、手に入れてはいけないのでしょうか。

聡子の美しさの描写

作品中の随所にみられた聡子の外見の美しさに関する描写はこんな感じです。

象牙の雛のやうに整った形の鼻をした聡子の横顔
~中略~
その幾分薄目な唇にも美しいふくらみが内に隠れ、笑ふたびにあらはれる歯は、シャンデリアの光の余波を宿し、売るんだ口のなかが清らかにかがやくのを、細いなよやかな指の連なりが来て、いつも迅速に隠した。

時々、ちょっと盛り過ぎでは?と思うところもありましたが、とにかく美しくて、部分的に読むだけでも楽しめます。

情けない時代

書生の飯沼が御先代様に合掌しながら心の中で唱えた内容

何故時代は下って今のやうになったのでせう。 何故力と若さと野心と素朴が衰へ、このやうな情けない世になったのでせう。 あなたは人を斬り、人に斬られかけ、あらゆる危険をのりこえて、新しい日本を創り上げ、創世の英雄にふさはしい位にのぼり、 あらゆる権力を握った末に、大往生を遂げられました。あなたの生きたられたやうな時代は、どうしたら蘇へるのでせう。 この軟弱な、情けない時代はいつまで続くのでせう。いや、今はじまったばかりなのでせうか? 人々は金銭と女のことしか考へません。男は男の道を忘れてしまひました。清らかな偉大な英雄と神の時代は、明治天皇の崩御と共に滅びました。 あれほど青年の精力が残る隈なく役立てられた時代は、もう二度と来ないのでありませうか?

今も同じように感じます。いやむしろ、悪化し続けて今に至ると言えるのかもしれません。

人間の卑劣さ

冒涜の快楽。一等飯沼が大切にしてゐるものを飯沼自身が潰さねばならぬときの、白い幣に生肉の一片をまとはりつかせるようなその快楽。

優雅な貴族階級の世界が描かれている物語ではありますが、裏切りや裏の顔など、人間の卑劣で冷酷な部分も描かれていて、それらは美しさの対極にあるがゆえに、いっそう醜く映り、辛辣に心に刺さりました。

一見優しさのように見えて猛烈な怒りを呼び起こす言動。こういう事をすると恨みが募り、あとでひどい仕打ちを受けるのですよね。

現代はこのような時代に比べれば道徳の解釈が進み、人を傷つけないようにするとか多様性を認めるとか、良いほうへ変化してきた面はあるのかもしれないと思いました。

美しい恋文

聡子の書いたラブレターがとても美しくて素敵だったので。

雪の朝のことを思ふにつけ、晴れ渡ったあくる日も、私の胸のうちには、仕合せな雪が降りつづけてやみません。
その雪の一片一片が清様の面影につらなり、私は清様を想ふために、三百六十五日雪の降りつづける国に住みたいと願ふほどでございます。
~中略~
あんな我儘なお願ひの底に、切羽詰まった気持ちの隠れてゐることをお見抜きになり、何も仰言らずに雪見にお連れ下さって、私の心にひそめてをりました最も恥ずかしい夢を、叶へて下さったお心の優しさでした。
~中略~
凛々しい制服をお召の清様のお姿は、丁度私を拐はかす雪の精のやうに覚思ひ倣され、清様のお美しさに融け込むのは、そのまま、雪に融け入って凍死する仕合せのやうに思はれました

外見や所作も美しい人からこんなに官能的で美しい恋文をもらうなんて、それはもう、盲目的な恋に溺れてしまいますね。

愛しい人のいなくなった世界に気づかなかった事

月光姫(ジンジャン)が亡くなった事を知らされた手紙を読んだシャムの王子ジャオ・ピーの言葉

ある朝、もし僕の舌が世界の味はひに微妙な差を発見してゐたら、・・・ああ、もしさうしていたら、僕は即座にこの世界が、『月光姫のゐない世界』に変ってしまってゐることを、嗅ぎ当ててゐたにちがひないのだ

月光姫がこの世にいなくなってからそのことを知るまでの間、自分がいつわりの世界に平然と住んでいたという謎。それに気づきたかったという気持ちが切ないです。

恋人を愛する気持ちを神聖なものにしておきたいけれど、実はそうでもない面もあるというのが、本当のところなんですよね。

強さと弱さ

宮様の許嫁を孕ませたとは天晴だと喜ぶ祖母。

十重二十重に彼女の晩年を遠巻きにしてやがて押しつぶさうと企んでゐる力への、祖母のこんなしっぺがえしの声は、明らかに、あの、今は忘れられた動乱の時代、 下獄や死刑を誰も恐れず、生活のすぐかたはらに死と牢獄の匂ひが押し寄せてゐたあの時代から響いてきてゐた。

女は世の中の理不尽に耐えているからこその発想ですが、戦争を体験した人というのはやはり、そうでない人の想像には及ばないところにあるように感じました。

とはいえ、周りに倣い、世間の目を伺って、その中でうまく生きていく事の大変さもあります。

そして清顕は、今の父侯爵が、世間体をおそれて、息子を勘当することもできない立場にゐるのを知った。

それは男の弱さに見えたりもしますが、いつの時代であっても難しい事でもあるでしょう。

裏切る人の事

この女は自分が手引きをして逢はせる人たちを、のこらず売って快とするやうな性格の持ち主にちがひなかった。 咲いた後で花弁を引きちぎるためにだけ、丹念に花を育てようとする人間のゐることを、清顕は学んだ。

蓼科のえぐい性格がよくあらわされています。簡単だけどとても的確。誰にでも書けそうでなかなかできない表現だと思います。


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