「刺青」谷崎潤一郎

作成 2013年10月28日（2024年1月12日更新）

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私はここ数年間、極限まで持ち物を減らしたり自分を見つめなおしたりする事を進めていて、その中で、「本当に好きなものだけを厳選して所有しよう」という価値観に傾いてきました。

そして、自分が本当に好きなものってどんなものだろう？自分が価値を置いているのはどんなことだろう？と考えてたどり着いた一つの答えが、「美しいもの」です。

谷崎潤一郎という作家は、耽美派にカテゴライズされ、耽美主義とは「常識や道徳よりも美を重んじる考え方」です。

美には興味があるけど、谷崎潤一郎の作品は、美しいというか、「妖艶・エロ」の印象があり、古い時代のエロスっておどろおどろしい気持ち悪さや怖さがあって、少し嫌悪感もあったのですが、「美」についてもっと知りたく、彼の作品を色々と読んでみたいと思いました。

1 見た目が美しい
2 私にとって美とは
3 現代社会におけるエロスは間違っている
4 美とは隠れたところにある

見た目が美しい

其れはまだ人々が「愚」と云う尊い徳を持って居て、世の中が今のように激しく軋み合わない自分であった。

この書き出しが、まず美しい。

字面だったり、言い回しだったり、妖艶な雰囲気が漂っていて、うっとりとした気分で読めるのがいいなと思いました。

文章って、その人の人柄が出ますよね。

まぁ谷崎潤一郎なんて歴史的な文豪なので、意図してイメージ操作しているのだろうけど、美しく生きるには、美しい文章を書いたり、美しい言葉選びができるようになりたいところです。

私にとって美とは

私が思う「美」とは、「自分の愚かさを自認しつつも、自分の価値観を信じ、他人の目を気にすることなく貫く事。」です。

周囲に流されたり、損得で揺れ動く姿は醜い。

私にとって、考え方や行動について嫌だなと感じる事は美しくない事と直結しています。

考え方や行動という内面的な部分について、私は美を貫いている自信はあります。でも、見た目や持ち物や立ち振る舞い的な外面的な部分においては、美を貫けていないと感じ、内側も外側も美を貫きたいと思いました。

妖艶である事って、自分とは縁遠くて…正直なところ、エロい感じの女性って男性に媚を売っている様なあまりよくないイメージがありました。

でも、本来のエロスってそういう事じゃないのかもしれません。

現代社会におけるエロスは間違っている

現代社会において、エロスはとても気軽なものとなり、電車の中や町中の広告やインターネットなどでは、エロを想起させるものが誰もが眼にするところに堂々と置かれています。

それって本当のエロスでしょうか？美しさを伴う、美としてのエロスでしょうか？

また、それらや一般的な男性は、美しきエロスと暴力的なエロスを混同している気がします。

人が嫌がることを無理強いしたり、望んでいないのに心身を痛めつけたりする行為はエロスではなく、暴行・犯罪。いじめ等。嫌悪感しかありません。

「刺青」の中に出てくる娘は、唇をわななかしつつも、嫌がって逃げようというそぶりは一切ない。娘という割にやけに落ち着いて度胸が据わっている印象で…彫師に身をゆだねるところの描写があっさり過ぎていて、もう少し心の葛藤なり、需要の喜びなりが欲しい気もするけれど…自らの意志で受け入れているところに、美としてのエロスの成立が実現しているように思います。

それから話は戻って、現代社会におけるエロスの間違いについてですが、金銭的な見返りを求めてエロを商品とする行為も、それは単なる商業・仕事・ビジネスであって、一般的な事務作業やレジ打ちバイトなんかと変わらないと、私は考えています。

エロくもないし、偉くもない。

芸術的な美を職業とする事の難しさはあるけれど、本当の美しきエロスは、純粋さなしでは成り立たないものではないでしょうか。