「老妓抄(ろうぎしょう)」岡本かの子

作成 2013年11月23日 （2024年1月14日更新）

岡本太郎の母である岡本かの子の短編小説。
あらすじは、「花柳界を生き抜いて財を成した老妓は、発明家を夢見る若い男を囲う生活を始めたが、生活の安定ができると男は意欲を失ってしまう」といった流れでした。

短い作品であるのに、いいセリフが沢山出て来て収穫の多い作品でした。強くて物事に動じず達観している老妓のキャラクターも好きなタイプです。気になった点をピックアップしておきます。

たった一人の求めている人

何人男を代えてもつづまるところ、たった一人の男を求めているに過ぎないのだね。いまこうやって思い出して見て、この男、あの男と部分部分に牽かれるものの残っているところは、 その求めている男の一部一部の切れはしなのだよ。だから、どれもこれも一人では永くは続かなかったのさ

恋多き女ではないけれども、なんかわかる気がします。そしてまた、たった一人の求めている人というのは、実在しない想像上の理想像かもしれません。

まどろいの生涯

あたしたちのして来たことは、まるで行燈をつけては消し、消してはつけるようなまどろいの生涯だった

誰の人生もみなこういうものかもしれません。同じ過ちを何回も繰り返すし、好きなものは好きだし、根本的な性格は変えられないし…。それでも愛しき我が人生ですが･･･。

パッションは色気

パッションかい。ははは、そうさなあ、君たちの社会の言葉で言うなら、うん、そうだ、いろ気がおこらないということだ

的確でいい言葉。一見、色気の多い業界で働いているとか色気があるように見える人の人生って、やっている事は無機質でお金事だけ考えて何の感情もなく、パッションからは最も遠いところに居たりします。 見せかけの色気ではなく、情熱をもって色気のある人生を送りたいものです。

湿り気がない没頭

仕事であれ、男女の間柄であれ、湿り気のない没頭した一途な姿を見たいと思う。

湿り気がないとはどういう事だろうか？カラッとわき目もふれずに集中する事でしょうか…。

花柳界で成功した老妓であっても一途に没頭する事はできなくて、夢を持つ若い男にその実現を託したのかもしれません。

老妓の考えや行動はかっこいいのですが、人を見る目としてその男を選んだことはどうなのかな？とだけ思ってしまいます。

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