「藪の中」「地獄変」「或阿呆の一生」「葱」芥川龍之介

作成 2013年11月22日 （2024年1月12日更新）

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芥川龍之介の4つの短編小説の感想まとめ

藪の中

「真相は藪の中」という言葉のの元となった小説。「真相は闇の中」が正しいのでは？と思っていたが、「藪の中」が正解。

小説の面白さって、文章の上手さだけでなく、構成とか何を言いたいか等が大事だと改めて思いました。つまり、企画力でしょうか。

これって、ビジネスやブランディングとか表現活動とか様々なところに通じることで、いわゆる成功者とか世に名を遺す人ってこういうことが出来ている人なんですよね。

いつの時代も、すごい人と言うのは視点や見えているものが違いますね。

この作品は、若いころにも何回か読んだことがある気がしますが、歳を重ねて人間関係の複雑さやズルさが分かって来た今読むと、深いなぁと切なさすら感じます。

また、結局真実は何なのか？という結末を読者に想像させるしようとなっているけれど、複数の事実があるのでは？と、シュレディンガーの猫の実験で知られる量子力学の二重スリットみたいだなと思ってしまいました。普遍的なテーマの小説は時代を超えて楽しめるんですね。

地獄変

昔の言葉で書かれていて読みにくいためyoutube朗読を聞きながら青空文庫の文字を目で追うという形で鑑賞しました。有名な文学であればこんな楽しみ方が無料でできるなんて、便利な世の中になったものです。

さらに、ブログ等に書かれているいくつかの解説を読んで理解を深めました。自分一人の力ではたどり着けないところまで理解を深められるのでありがたい限りです。

感想としては、芥川作品がよくテーマとしている人間の葛藤が絵描かれている作品で、どうしたらよかったのか？何が正解なのか？答えを出すことが難しく、辛い気持ちになるエンンディングでした。

絵師の良秀と大殿様。良秀は娘と自分の命を失ったが最高の芸術を目指すという志を貫きました。

大殿様は素晴らしい絵を手に入れたけれどもおそらく人望や立場や平穏に生きていく心などあらゆるものを失ったのではないでしょうか。

何かを得る為には何かを失うのはよくある事です。もしかしたら、あらゆるものは、何かの犠牲のもとに得られているのかもしれません。

失ってもいいと軽々しく言うべきではない。失う痛みを自分事として想像する事は大切です。

私はふと、「食物連鎖のピラミッドと食べる事」が思い浮かびました。

私たちが日々生きている事は、様々な動植物の命の犠牲のもとに成り立っています。何も犠牲にしないことは不可能ですが、そういった事実を忘れずに、恥じない人生を歩まねばならないと思いました。

或阿呆の一生

芥川龍之介が生まれてからの人生において、ポイントとなる出来事や思いを端的に時系列で綴っている作品。

交流関係や背景の出来事を知らないと何を指しているのがさっぱり分からないけれど、彼の周辺情報が増える毎に「なるほど、こういう事をいっているのね」と理解が深まるので、何回も読みたいところです。

内容は深くてとても精神的で重たくはありますが、文体や構成は全体的にとてもオシャレな仕上がりです。

詩よりは長めだけど小説よりは圧倒的に短くて、章ごとに着けられているタイトルもシンプルな単語でつけられています。

私は短い文章が好きなので、もし、人生の集大成として自叙伝的なものを書くならこういう感じで書いてみたいと思いました。

それから、雰囲気的が好きだったり、文章がキレイだったりで気に入った章は、以下です。

葱

文豪は人間観察力があるからか素敵な女性を見つける目も優れているのかもしれません。

主人公の「お君さん」は、宇野千代とのことですが、見た目の美しさだけでなく、豊かな芸術的趣味を持ちつつ経済感覚のバランスも兼ね備えているところがチャーミングで、こんな女性がいたらモテるだろうなぁと思いました。

私にとって芥川作品全般の印象は、暗い・重い・グロテスク・怖い・不安などなどダークなものなのですが、この「葱」は、そういった要素が一切なく、楽しく読める作品でした。

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