「花ざかりの森・憂国 自選短編集 (新潮文庫) 」三島由紀夫
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三島由紀夫の短編集小説と映画「憂国」を見ました。
短編集におさめられていた作品は次の通り、「花ざかりの森」「中世に於ける一殺人常習者の遺せる哲学的日記の抜萃」「遠乗会」「卵」「詩を書く少年」「海と夕焼」「新聞紙」「牡丹」「橋づくし」「女方」「百万円煎餅」「憂国」「月」
作品によってテイストが大きく違い、残念ながらあまり好みのものがなかったのですが、「憂国」は映画化されているという事を知り、さらっと小説を読んだ後に映像を見て、色々と思うところがありました。
芸術作品とはこういうもの
短編小説やエッセイの様な読み物や素人が書くブログなどの読み物だったり動画など、今の時代はほぼ無料で様々な文章や映像を読むことが出来ますが、芸術的な作品とはこういうことだと改めて感じました。
モノクロの無声映画の様な世界観の中で、切腹(はらきり)という動作にスポットライトをあててその他の無駄なものを一切省いたような潔い構成が、その行為を必要以上に際立たせます。
そして、生と死、性と死、男と女、美と残酷、喜びと悲しみ・・・幾つもの対となる両極端の物事が激しさを表している様に感じました。
諸説ありますが、公式に切腹をした記録のある最後の日本人は三島由紀夫かもしれません。
それを暗示するかのようなシーンを目にして、三島先生はどんな気持ちでこの作品を作ったのだろうかと、ここに込められている意味の大きさに途方に暮れる思いがしました。
日本人のDNAを受け継ぐものとして
谷崎潤一郎の「陰影礼賛」を読んだ時に、陰に美を感じる感覚について、同じ日本人として分かる気がする!ととても共感しましたが、切腹という文化も日本人がもつ独特の感性が影響しているところが多いという見方をする人がいます。
いくら日本人であっても、切腹という極端な行為は誰もができるものではありません。
また、集団における命令に忠実すぎる点などは、敗戦後に批判を受けた日本人の行動の一端を思わせますし、現代の日本人の中でも、そういう思想や行動はよくないとされる傾向さえあります。
切腹を肯定する気持ちはないですし、美しい行為だとは考えにくいですが、心に強く訴えるものがあることは否めません。
そのぐっとくる感じは、もしかしたら、自分が日本人であるからこそなのかもしれません。
三島由紀夫をはなぜ自死したのか?
やっぱりこの事実について考えてしまいます。どうやっても知ることのできない、答えのでない問いであることは分かっていますが。
それで、検索をしたりしながら少し考えていたのですが、「彼は作家なので書けなくなったことが一番大きな理由だろう」と言っている人がいました。
作家であるなら、書いて伝えたい事があったけれど、書けないとか書いても伝えられないとかで、割腹自殺という衝撃的な方法が一番伝えられると考えてしまったのではないかな?という考えが思い浮かびました。
確かに、強い衝撃をもたらしたという意味ではその強さはあまりにも強力です。
でも、書くという正攻法で、川端康成の次のノーベル賞を狙うなり、地味だけど最後まで命を全うする形で、伝えたい事を伝えようとし続けて欲しかったという思いは変わらないですね。
「憂国」の映像および小説によって、三島由紀夫が作品に込める思いの本気度がいかに桁違いであるのかを見せつけられた気がします。
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