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「月と六ペンス」サマセット・モーム

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お洒落なタイトルの小説。存在は知っていたけれど未読だったので読んでみました。

月とは何?で六ペンスとは何か?

明治はされていませんでしたが、私の解釈としては…

月とは、月の引力のように自分ではどうしようもないくらい引き寄せられてしまう事や行動の事。六ペンスとは、富や名声や普通の家族といった一般的な幸せではないかなと感じました。

ストリックランドが家族を捨てて絵を描かずにいられない衝動・夫を捨てて恋に落ちたが自死を選んだブランシュ・一目ぼれ的な恋をして添い遂げたアタ・ほぼ約束された将来を捨てた天才的な医師・・・。

激動の人生で不幸な結末に見えるかもしれないけれど、本人は辛かったのか?幸せだったのか?色々な感情があるだろうけれど、「そうするしかなかった」。人生って、そういうものなのかもしれません。

一方、この本の語り手をはじめとして、ミセス・ストリックランドやストルーブなど、一般的な幸せを求めたり、それを手に入れたりした人たちは、本当に心の底かか、それを求めたことを正しかったと思えているのでしょうか?

私は、そのような人たちについてなんとなく嫌悪感を感じる部分があり、一般的な幸せの良さについて、過大評価しないようにしたいという考えを持っています。

とはいえ、月の引力の様なものに絶対的な良さを感じている訳でもありません。

どんな理由があっても、ひどいことをされたら相手は傷つくので、できるだけ配慮する必要があると思います。他人を傷つけて平気でいる人が多い世の中は悲しいです。

そして、人々の色々な欲望や引力から影響を受ける中で、自分の本当の幸せを見つけて掴んでいく人生って、難しいですね。

ほんの小さな幸せだとしても、幸せを感じられたら感謝しようと思いました。

不幸は人間を美しくはしない

人生の難しさや人間の複雑さ等が描かれる中で、時々、人の心の真実について確信をつくような事が書かれていて、ドキッとさせられました。例えばこんな感じです。

不幸が人間を美しくするというのは、嘘である。
幸福がそうすることは、時にある。
だが、不幸は、多くの場合、人をけちな、執念深い人間にするばかりだ。

不幸を経験すると人にやさしくなれる…なんて思っていましたが、キレイ事かもしれません。

理不尽な目にあったり、嫌な事されたりすれば、ムカつくし、恨むし、憎むし、仕返ししたくなったり、地獄へ落ちろと思ったり…。顔に出したり、言葉にしたり、行動に移したりしなくても誰だってそういう思いを抱いているものだというのが真実だろうと思いました。

だからこそ、自分がちゃんと幸せでいられるように、不幸を避けて自分を守ってあげないといけないのではないでしょうか。

自分の居場所

どこにいても自分の居場所はここではない気がするという人はいるでしょう。私の中にもそういった思いが少しあります。

肉親の間においてすら、一生冷たい他人の心をもって終始するかもしれないし、また彼らが実際知っている唯一のものであるはずの風物に対してすら、ついに親しいを感ぜずじまいで終わってしまうという場合もある。 よく人々がなにか忘れがたい永遠なものを求めてはるかな旅に出ることがあるが、おそらくこの孤独の不安がさせる業なのであろう。

まぁ分かる。でも、そんな場所や物は本当にあるのでしょうか。あったとして多くの人が見つからずじまいになりそうで、探しに行く事が正しい事なのか?それを見つければ幸せになれるのか?疑問があります。

ただ、それでも、多くの人がこの違和感や孤独感を感じているということは確かなようです。

自分だけが孤独なのではなく、みんな同じように抱く感情なので、そういうものだと受け止めて今できる事に集中すればいいのかもしれません。

人生は自己満足

ストリックランドがお金が無くなった晩年に、お世話になった人たちに自分が描いた絵をプレゼントしたエピソードは、物語としてはありがちだと感じてしました。

ですが、最後の傑作ともいえる壁の絵を燃やせと言った事は意外でした。

ストリックランド自身、傑作だということは知っていたんでしょうね。つまり、彼の望みは達せられ、彼の一生は完成されたというわけ。いわば世界をつくり、それをよしと見たわけですねえ。だからこそ、誇りをもって、同時にまた侮蔑をもって、永久にそれを抹殺してしまった。

月の引力に惹きつけられるように、どうしてもやらずにはいられない自分の使命・人生において本当にやりたい事は、 それでお金を稼ぎたいとか、賞賛を集めたいとかは関係ない。そんなことは原動力になっていないし、そんなことに左右されるものではないのでしょう。

私は、ブログを書いたりyoutube動画つくったりすることを生き甲斐の一つのように感じてはいますし、発信するからには、何か価値のあるものを…なんて、崇高な思いで良きものを残したいような気持がゼロではないと自負していましたが、甘いなぁと。

広告収入が下がるとやる気が出ないとか、発信方法が定まらないと活動を継続できないとか、そういった事に関係なく、「ただやりたいからやる。やらずにはいられない」そんな事ってあるのでしょうか?それを見つけられた人こそ、幸せなのかもしれません。


月と六ペンス



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