「麦秋」映画 小津安二郎監督／出演：笠智衆・原節子
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「東京物語」を見たら3部作を全部見たくなって一気に続けて視聴してしまいました。名作って癖になる良さがあるように思います。
見た順番は、東京物語→晩春→麦秋。古い順番でいうと晩春→麦秋→東京物語なので、一度に見るならこの三部作は時系列の順番がおすすめです。
それぞれの感想を一言でまとめると、東京物語は一番万人受けしそうで人気が高いのも納得。晩春は父娘関係が切なく奥深い。そして麦秋は家族とかお嫁に行く事について考えさせられる映画でした。
何のための家族？なぜ嫁ぐのか？
私自身、女で、娘として育てられ家を離れて嫁いだ事に関する自分なりの思いはあります。
家族とか、嫁ぐという事についてあまり深く考えずに、そうするものだと思い込んで行動してしまった感もあります。
それに比べて、昔は「娘を立派に嫁に出さないといけない」とか、「家族のためによい嫁ぎ先を選ばなくてはいけない」という考えが強かったのでしょう。
家族が共にする時間も長く、共依存関係にもあり、普通から外れることを恐れ、普通とか普通より少しましだと自認することが幸せであり、そういう枠組みに沿うようにみんながそれぞれに与えられた役割を必死で演じているように見えました。
そこには大きな自己犠牲があり、それに伴う痛みは、つらいけれどもそれが幸せであるかのようです。
何が幸せか？何が正解か？そんなものはないと私は思うし、多くの人も人それぞれでいいんじゃなかろうかと思い始めている今、家族や結婚の形は大きく変わりました。
変わるということは合わない部分があったからで、それによってよくなった面はあります。でも、失ったり傷ついたりするからこそ得られるよきものもあったのかもしれません。
楽な方へ、痛くない方へ、自由が多い方へ、人は進みがちで、進化と便利の力でそれがどんどん可能となってきていますが、あえてそうではないものを選ぶという選択肢は忘れずにいたいです。
紀子の決断が切なくて、そんなことを思いました。
独りよがりの自己犠牲は何の意味もない時がありますが、愛や優しさ等自己の利益だけではない価値ある思いがあるならば、決断の先は幸せがあって欲しいものです。
ローアングル・固定キャメラがいい
3部作を続けてみると、小津監督作品に特徴的なローアングルで固定キャメラという撮影方法にすっかり馴染みます。
スピード感がある近代的な映画は動的でダイナミックさはありますが落ち着かない。
それに比べると、自然と物語の中に入っていき、ゆったりとした時間が流れている中で、自分もその中の登場人物の一人になったかのように、自然と日常生活を眺めているような感覚で時が流れていきました。
茅ヶ崎館
「晩春」「麦秋」「東京物語」だけでなく、「父ありき」「長屋紳士録」「風の中の牝鶏」「宗方姉妹」「お茶漬けの味」「早春」などの執筆がなされた場所は、茅ヶ崎会館として、宿泊や食事ができる施設として開放されています。
最新の高級ホテルや流行のレストランもよいですが、こういった場所は訪れておきたい、好みの場所です。
雰囲気が趣味に合っているという理由ではありますが、建物の老朽化や維持の大変さなどで、歴史ある古い建物は立ち入れる機会の限りがせまっているとも言えます。
幸い、本や映画は技術のおかげでほぼ永久に楽しめることが出来そうですが、建物内に入り、空気感を感じで味わえる体験はそうはいきません。
昔のものを大事にし、先延ばしせずに行動する事は、やはり必要だと思いました。
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