「ソクラテスの弁明」プラトン 納富信留訳
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古代ギリシャの哲学者ソクラテスが告発されたことに対する弁明を弟子のプラトンが記述したという作品。
答えは分からない
ソクラテスのことを「屁理屈おじさん」と表現している人がいて、私にとってはその印象が、良くも悪くも強くあります。
なので、内容としては、有名な「無知の知」を体現しているエピソードで学ぶところは多いのですが、屁理屈と言えばそうとも言える気もして、所々、「言い負かされてはいけない」と防衛本能が湧き上がってくるような複雑な気持ちを感じたりもしました。
そういえば現在では、youtubeで人気のひろゆき氏が「それってあなたの感想ですよね？」を決めセリフにして、様々な知識人を黙らせています。
ソクラテスが、政治家・詩人・職人の知者たちに「私は知らないことを知らないと思っている」と対話を重ねていった様子と、まさにそっくりな気がして、古代ギリシャ時代も現在も、市井の人たちが言葉を戦わせ続けてる事に変わりはないところが面白いと思いました。
それから、出る杭が打たれる風潮も、このころから変わっていないようです。
例えば今は、週刊誌の「文春砲」によって人気絶頂の有名人が次々と見えにくい部分を暴露されて表舞台から引きずり降ろされています。
ソクラテスも、あまりにも若者らからの人気を集めたために周囲の恨みを買ってしまった部分はあるのでしょう。
何が正しいのか？正しい事を言えばよいのか？信念を貫くことは正しい事なのか？答えは人によって違い、その時の状況などによって自分で選ぶしかないのだろうけれども、すごく難しい事ですね。
そういう判断に迫られた時に、自分はどうするのかについて、一つの事例としてこの本を読んでおく意義はあると感じました。
死ぬことは善いものかもしれない
ソクラテスが死刑で死ぬことに対して言った言葉
もしかしたら善いかもしれないのに、そうかどうか知らないものを、私は恐れることも、逃げることも決していたしません。
私自身、よく考えもしないで、良いとか悪いと思い込んでしまっている事が多くあると反省しました。
死についても、確かに、「怖い」というイメージが当たり前のように刷り込まれています。死は善いものかもしれないと思えた事は歳を重ねつつある今、これからを強く生きる助けとなりそうです。
また、死生観以外において、道徳とか差別なども子供の頃に教わったことをそのまま鵜呑みにして、自分の価値観や判断基準になってしまっていることが沢山あるでしょう。
それらに気づくことは難しそうですが、色々な経験をついて考える力も少しはついてきた今、もう一度真っ白な状態に戻って、自分はどう考えるのか？ちゃんと自分の頭で考えた意見を持ちたいと思いました。
何のために生きるのか？
金銭ができるだけ多くなるようにと配慮し、評判や名誉に配慮しながら、思慮や真理や、魂というものができるだけ善くなるようにと配慮せず、考慮もしないとは
これを言われると心苦しいな…という感じです。
生きていくのに必死でとか、生活するので精いっぱいだからと自分に言い訳をして、いかにお金を稼ぐかと仕事ばかりしている人は多いです。
私もそうですし、周りを見てもそういう人ばかりで、仕事をする事こそ素晴らしいとか、仕事をしていないと悪といわれる風潮さえあります。
古代ギリシャ時代に比べると、現代社会は確かに文明も進んで豊かになっていますが、やっぱり、何か大きく間違ってしまっているのではないでしょうか。
知る事・考える事は、意識して、もっと力をいれて大事にしなくてはいけない事だと、改めて感じました。
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