羽田圭介『滅私』ラスト結末は?感想・考察と「滅私」の本当の意味
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芥川賞作家羽田圭介さんの「滅私(めっし)」。ミニマリスト界隈を舞台にしたお話とのことで読んでみました。
羽田圭介さんの作品は他にもいくつか読んでいて、“皮肉っぽいモノの見方”が結構好きです。
羽田圭介『滅私』あらすじ(ネタバレなし)
まず、ネタバレを避けたい方、物語の前提を確認したい方のために、簡単なあらすじはこんな感じです。
彼は極限まで無駄を削ぎ落とし、必要最低限の物だけで暮らす生活を体現します。人間関係にも淡泊で、同志が集うサイトの運営と投資で自由とスマートさを手に入れ、煩悩から解放されたかに見えました。
しかし、その「身軽生活」を揺るがす出会いが訪れます。冴津のかつての所業を知る人物が現れたことで、過去の暗部が呼び起こされ、彼の世界は徐々に崩壊していくのです。
過去は物のように簡単に捨てられるのか? ミニマリストの男が直面する、現代社会の悲喜劇。自己を滅し、物を捨て、すべてを削ぎ落とした先に何が残るのかと苦悩していきます。
わたしが実際に『滅私』を読んだ個人的な感想
実は小説を読むのが久しぶりで、親近感のあるテーマで面白そう!と厳選チョイスしたつもりだったのですが、読み進めてみたら、前にも読んだことがあると気づきました。
「読書体験は記憶として持っておけている」と思っていたけれど、読み終わったそばから記憶はどんどん薄れ、無自覚のうちにそれを手放してしまっていたようです。(手放しがちなミニマリストという皮肉)
大概の小説は自分にとっては未知の世界の出来事で、書かれている内容は、舞台設定も含め、初めて知ることだらけです。
でもこの本は、私自身が所属しているとも言える世界(ミニマリスト界隈)が舞台なので、現実との境界線があいまいになってしまっていたのかもしれません。
とはいえ、だからこそ、物語の世界に没入できて、本で描かれているミニマリスト界隈に、いちブロガーとして自分も存在しつつ、読者としてその物語を読んでいるような、二重視点で楽しめるという面白い読み方ができました。
ただし、後半からラストの展開の不気味さは、恐怖感も倍増して、ちょっと暗い気持ちになってしまいました。
ミニマリストって精神的に得体のしれない怖さがあることを表現したかったのでしょうか?
私も世間一般から見たら、そういう不気味な存在なのかと思うと少しショックだけど、まぁミニマリストなんて少数派であることは自覚していますし、そんなものかもしれません。
それにしても、小説家のリサーチ力はすごい!描写が上手だし、人が表には見せないようにしている心境や行動原理とか本質的な心理までよく考察されていると感じました。
この本の中で心に残った場面は、冴津が彼女の時子と万里の長城へ旅行に行くシーンです。
文化のほとんどが、独裁者や権力者たちの偏執狂的な思いによる無駄の産物だったと思い至った。華美な器や、茶室といった文化もそうだ。
人々の心を楽しませるものは、必要性でなく、無駄ともいえる動機で作られてきた。
私も持ち物を減らしてできた時間や場所の余裕を、音楽や読書だったり、くだらないことを考えて発信したりという「必要ではない無駄な事」に使っています。
文化的な事が好きで、大切にしていきたいと強く思ってもいます。
そして、その考えに沿った行動として、音楽を聴く事も読書や発信活動も、モノを持たずに楽しめる事だなんて思っていましたが、 絶対に必要なものではない時点で、音楽や読書や発信活動は、形はないけれど無駄なモノともいえます。
それに、素晴らしい音楽が私の耳に届くまでには、楽器を弾く人がいたり、音楽の録音や編集して世に出て流通するために様々な道具やモノが必要です。
自分がモノを持たずに楽しませてもらっているだけで、無駄なモノなしに今の楽しさは享受できません。
自分の見える範囲や届く範囲がすっきりとしているだけで、そういう矛盾は抱えている事を忘れてはいけないと気づかされました。
作者の意図は?「滅私」という言葉の解釈と考察
滅私という少々聞きなれない言葉から私が連想するのは、「滅私奉公」という古めかしい制度です。
その昔、今ほど自由がなく、国や家族などの様々な制度や価値観に縛られ、物質的なモノも足りず、生きていくために仕方なく、よそに働きに出されていた習わし・・・
滅私奉公の文字としての意味は、個人の利益や欲望を捨てて国や会社などに忠誠を尽くすという意味です。
真っ先に思い浮かんだイメージは、田舎の子供が、家族が食べていくために、町の商人の家に住み込みで働かされる姿ですが、お国のためにと戦争の兵士として招集されたり、ブラック企業に就職せざるをえなかったり、家庭の事情でワンオペ育児や家事を担わされたりというのも、滅私や滅私奉公の一つかもしれません。
ですが、この本に書かれているのは、それとは真逆の様な自分の意思による自分の自由を追求した先の滅私です。
真逆であるのに、同じところに行きついていくような「なにもない」「持たない」という状況が興味深いです。
つまり、モノや環境ではなく、心の在り方や考え方などの見えない部分について、それぞれがどう考えるのか?という事を作者は突きつけているのではないでしょうか
ラストの結末がなんとなくぼんやりとしている事も、そこに明確な答えがあるわけではなく、各自がどう考えるのかという問題であることにつながっている気がします。
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